05


もう勘弁してくれ。

隣に座った昇は、名前は?クラスは?と色んな質問をしてくる。

俺は適当にその質問を受け流し、早く帰りてぇと心中で呟いた。

「昇。その辺にしときなさい。まったく遊士が説明しないなら僕が説明します」

やれやれと肩を竦め、一人掛けのソファーに腰を下ろした幹久が漸く本題に入ろうとする。

いや説明いらねぇから帰らせろよ。

ちぇー、とつまらなそうに唇を尖らせた昇が隣から退く。

それに遊士もやる気なさげにカップに口を付け、ソファーに身を沈めるとさっさと済ませろ、とばかりに幹久に視線を投げ傍観体勢をとる。

なんかめちゃくちゃコイツを殴りたいと思うのは俺だけか?

「と、その前に。鬼ごっこについて誰かに説明とか聞きました?」

「まぁ、一応。和真から」

簡単な説明と注意?を。

「それなら一から説明しなくても大丈夫そうだね」

そう前置きをし、幹久はルールやら学園の地図を広げてゲームの範囲について説明し始めた。

「使うのは学園の敷地全部って聞いてるかも知れないけど、詳しく言うとこの生徒会室とか屋上、学園の寮、日常生活でも立入禁止にされている場所とプライベート厳守の場は省かれるから」

「分かりました。けど、俺入学したてでどこが立入禁止場所なのかさっぱり分からないんですけど…」

今日だって和真に聞いて初めて屋上が立入禁止場所だって知ったんだぜ。

そう言えば幹久はちょっと驚いた顔をして、何かを思い出したのか頷いて言った。

「久弥は外部からの新入生でしたね」

「まぁ」

外部からの入学って驚くほどの事なのか?

疑問が顔に出てたのだろう、幹久が続けて言う。

「外部からの入学はここ数年一人もいないんだよ。どうにも入学、編入試験が難しいらしくて皆諦めるんだ」


「へぇ…」

俺も入学試験受けたけど、レベル的には普通だと思ったけどな。

「それで、話戻すけど、新歓当日は寮とか立入禁止になってる場所には一応鍵をかける事になっている。けど万が一ってこともあるから、もし入ってしまったらすぐに出て」

「出なかったら?」

「失格の上、単位が貰えなくなる。新歓も授業の一貫としてカウントされるから気をつけて」

随分徹底してるんだな。これじゃサボる事も出来ねぇ。

「それから…」

幹久に新歓の説明を粗方受け終え、そろそろ逃げ…じゃなくて、帰るかと算段をつけていた時、正面から強い視線を感じた。

「おい、似非優等生」

またか。いちいち絡んでくんじゃねぇ。

「何ですか?」

嫌々視線を向ければ、腕組みをし、俺を見下ろす遊士がいる。

「簡単にやられんじゃねぇぞ。俺がつまんねぇからな」

クッと口端を吊り上げ、笑みを称える遊士を睨み付ける。

俺はお前を楽しませる為の玩具じゃねぇ!

と、言ってやりたいが自分の為にここは我慢した。

ここに来て俺の忍耐力はきっとレベルアップしてる、と思う。



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